研究課題/領域番号 |
17592144
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
松原 まなみ 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (80189539)
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研究分担者 |
田村 康夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40113047)
河村 隆 信州大学, 繊維学部, 助教授 (70242675)
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キーワード | 乳児 / 吸啜 / 母乳 / 人工乳首 / 動作解析 |
研究概要 |
我々はこれまで、人工乳首と母乳の吸啜パターンを比較するために、さまざまな角度から乳児の吸啜運動を解析してきた。本研究では、それらの知見を総括しつつ、超音波断層法及び3次元動作解析法を用いて吸啜障害の病態とその原因を明らかにする事を目的としている。 【目的】平成17年度は、nipple confusion(人工乳首の使用を原因とする吸啜障害)の病態を明らかにすることを目的として、母乳と人工乳首の吸啜運動に相違があるか否か、あるとすればどのような相違があるのかを検討する。 【方法】超音波断層法及び画像解析法を用いて乳児の吸啜行動を撮影し、運動解析ソフトを用いて画像分析を行った。 1)吸啜リズム 乳児の吸啜リズムを詳細に分析するため、3次元動作解析システムDLT : Direct Linear Transformation法を用いて吸啜周期、吸啜持続時間、吸啜休止時間を計測し、母乳と人工乳首における吸啜リズムの相違を検討した。さらに、経時的な運動リズムの変化をみるために吸啜周期の周波数分析をおこなった。 2)吸啜時の運動量およびその変化 外面から肉眼的に捉えられる吸啜運動として、吸啜時における下顎の上下運動を撮影し、DLT法によってその3次元軌跡を描出、2次元化し、運動量、及びその経時的変化をみた。それと同時に、口腔内面から捉えた吸啜運動として、超音波断層法を用いて舌運動の側面映像を撮影し、舌各部の上下方向の変位量、及びその経時的変化をみた。 【結果】(1)母乳の吸啜持続回数は緩やかなカーブで漸減するのに比し、人工乳首Mでは吸啜開始時に直母の2倍と多く以後急激に減少し、内容物がなくなることによって吸啜は突然終了を迎えた。単位時間あたりの哺乳量がM乳首に比して少ないN乳首の吸啜持続回数は、直母と人工乳首Mの中間あたりを推移し、哺乳時間は延長していた。人工乳首Mは、吸乳・嚥下量の多さを反映して母乳の場合よりも吸啜周期が長かった。(2)母乳の場合、吸啜時の舌上下運動の幅は大きく、哺乳窩への接触面積も広かった。人工乳首の場合、舌の上下運動の幅および哺乳窩への接触面積は小さかった。母乳吸啜時の舌の動きはレトルト袋から内容物を効率よく搾り出す動作に類似していた。(3)哺乳時の舌変位量は乳首の形状や硬さによって差違が認められた。 【考察】乳児は、乳首の硬さや形状などにより、適合的に舌運動を変化させていると推察された。母乳と人工乳首の吸啜運動には、明瞭な差異が見られ、これらの相違が乳頭混乱を引き起こす要因に関連しているのではないかと推察された。
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