矯正用beta-Ti、Ni-TiおよびCo-Cr-Niワイヤーについてレーザー溶接試料を作成し、引張り強度の測定と接合部周囲の微小領域X線回折法による相の同定を行った。Beta-Ti、Ni-TiおよびCo-Cr-Niワイヤーは、0.016×0.022inchサイズを用いた。引張り試験はクロスヘッドスピード0.5mm/minで行った(EZ Test、島津製作所)。微小領域X線回折は、CuKα線を用いて、管電圧35kV、管電流300mA、室温にて計測を行った。引張り強度は、beta-Ti接合試料が281から806MPa、Ni-Ti接合試料が167から416MPa、Co-Cr-Ni接合試料が515から908MPaであった。接合部近傍より得られた微小領域X線回折スペクトルにおいて、beta-Ti接合試料ではbeta-Tiの110と211ピーク、Ni-Ti接合試料ではオーステナイト相の110と211ピーク、Co-Cr-Ni接合試料ではコバルトの111、211および220ピークが観察された。Beta-Ti接合試料とNi-Ti接合試料では、主要ピークの強度の増加が認められ、これは試料に焼鈍が認められたことを意味するものと考えられた。レーザー照射により溶融された部位では、著しいピーク強度の減少、あるいはピークの消失が認められ、これは急速な温度変化により優先方向に結晶が配列することにより、粒子の特定面において回折が生じたためと考えられる。以上の結果、レーザー溶接法で得られたbeta-Ti接合試料とCo-Cr-Ni接合試料は、臨床応用に十分な接合強度を有し、機械的な特性に大きく影響を及ぼさないものと考えられた。
|