矯正用beta-Ti、Ni-TiおよびCo-Cr-Niワイヤーについてレーザー溶接試料を作成し、引張り強度の測定、レーザーの侵入特性、微小領域X線回折法による相の同定、およびSEM観察を行った。試料の作成には、0.016×0.022inchサイズのワイヤーを用い、150Vから230Vの電圧条件で作成した。引張り試験はクロスヘッドスピード0.5mm/minで行った。レーザー侵入深さの測定は、光顕像をJPEG形式で保存し、イメージプログラムを用いて計測を行った。微鏡微小領域X線回折は、管電圧35kV、管電流300mA、室温にて計測を行った。Ni-Ti試料の平均引張り強度は、beta-Ti試料およびCo-Cr-Ni試料の平均引張り強さと比較して有意に低い値を示した(P<0.05)。Beta-TiとCo-Cr-Ni試料の平均引張り強さは、銀ロウでロウ付けしたコントロール試料(Co-Cr-Ni)と比較して有意に低い値を示したが(P<0.05)、臨床適用に十分な値であった。Beta-Ti試料は、より深いレーザーの侵入深さを示した。全ての試料において、接合部より2mm離れた部位より得られた微小領域X線回折スペクトルは、as-receivedの試料と同様なスペクトルを示し、レーザー溶接後の試料において、オリジナルの結晶相が維持されていることが確認された。電圧条件190V以上において得られた溶接部位の微小領域X線回折スペクトルでは、ほとんどのピークが消失あるいは強度が著しく減少した。この現象は、SEM観察の結果から、一方向性の溶体化(directional solidification effect)によるものと考えられた。以上の結果、レーザー溶接法で得られたbeta-Ti試料とCo-Cr-Ni試料は、臨床応用に十分な接合強度を有し、機械的な特性に大きく影響を及ぼさないものと考えられた。
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