研究概要 |
1.生化学的分析 肉眼的に齲蝕の認められない被験者の上下顎前歯部唇・舌側面,臼歯部頬・舌側面の計8か所から採取した2日目歯垢を凍結乾燥し,強酸にてdigestion処理後,ミネラル(Ca, P, F)とタンパク量を測定した.Caは原子吸光分光光度計法,Pは比色法,FはFイオン電極法,タンパクはLowry法で測定した.その結果,下顎前歯部舌側の歯垢はミネラル量が最も多かった.また,採取した部位別歯垢に10%Sucrose添加後,歯垢のpH曲線を計測した結果,下顎前歯部舌側の歯垢が酸産生能が最も低かった(35^<th> American Association for Dental Research,2006年3月10日,米国にて発表). 同時に採取した安静時と刺激時の唾液中ミネラル量(陽イオン:Na, K, Mg,陰イオン:P, Cl)とタンパク量を各々イオンクロマトグラフィー,Lowry法で測定した.結果の一部は,口腔衛生学会雑誌(第56巻3号,2006年)に報告した. 2.分子生物学的分析 同歯垢を用いて,齲蝕原因菌であるMutans Streptococci(S.mutans, S.sobrinus)の口腔内部位特異的な定性をPCR法にて検討した.すなわち,採取した歯垢を生理食塩水にて洗浄した後,InstaGene Matrix Kitを300μl加え,DNAを抽出した.抽出したDNAは,Hotstar Taq Matrix Kitと,S.mutansに特異的なプライマーであるsm1,sm2,およびS.sobrinusに特異的なプライマーであるSobF, SobRを各々加え,PCRにて増幅した.増幅したDNAを1%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い,エチジウムブロマイドにて染色した.その結果,S.mutansは全ての部位において検出されたが,S.sobrinusは現在のところ下顎前歯部舌側からは検出されていない.
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