研究課題/領域番号 |
17592150
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
小方 清和 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90257006)
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研究分担者 |
白瀬 敏臣 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (20247018)
割田 幸恵 日本歯科大学, 生命歯学部, 助手 (50386257)
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キーワード | CPP-ACP / フッ化ナトリウム / 脱灰抑制 / ウシエナメル質 |
研究概要 |
我々はCPP-ACPを配合したGC社製MIペースト(R)(以下MI)のう蝕予防効果について検討した結果、MI単体では脱灰抑制や再石灰化促進の効果は明確でないことがわかった。そこで今回は,カルシウムとリンの濃度を低くすることで脱灰が促進される環境を設定し、MIとフッ素との相互作用による脱灰抑制効果を検討した。 [実験方法] ウシエナメル質を脱灰抑制の目的で作用させた各処理液に0.5時間浸漬後、脱灰液(0.1M乳酸、0.1M乳酸ナトリウム、1mM CaCl2、0.6mM KH2PO4:pH5.3)に23.5時間浸漬する操作を4日間繰り返した。処理液は以下の6条件を設定した。 (1)コントロール(処理液未使用)(2)0.05%NaF溶液(225ppm)5ml(3)0.02%NaF溶液(90ppm)5ml (4)0.02%NaF溶液+MI 2.1g(5)0.01%NaF溶液(45ppm)5ml(6)0.01%NaF溶液+MI 2.1g 実験が終了した試料は包埋、薄切し、マイクロラジオグラム、偏光顕微鏡による観察、EPMAによる元素分析を行った。 [結果および考察] これまでの実験でMI単体での脱灰抑制効果は認められなかったが、フッ化物との併用で脱灰抑制効果が明確に示された。これはMI中のカルシウムとリンをフッ素が利用して再石灰化の促進が増強され、再石灰化したミネラルが再び酸に脱灰されることなく耐酸性を示したと考えられる。また、カルシウムやリンが少ない環境でMIを使用することで、その効果がより発揮された。臨床上、唾液の流れの悪い部位はカルシウムやリンが少ない環境であり、それらの部位への応用が期待できる。さらに、低濃度のフッ化物でもMIを併用することで高濃度のフッ化物と同等もしくはそれ以上の脱灰抑制効果が得られることも分かった。これは、セルフケアとして高濃度のフッ化物配合歯磨剤の使用が困難な低年齢児や障害児・者において特に有効であると推測される。 以上のようにCPP-ACP配合ペーストはフッ化物が有するエナメル質の脱灰抑制効果および再石灰化促進効果を増強する働きを有し、う蝕予防にきわめて有効であることが確認できた。
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