研究概要 |
日本歯科大学新潟生命歯学部5年生のボランティア14名を実験対象者とし,顎模型の写真を提示した後に矢印が指し示した歯に用いるラバーダムクランプを次に提示したテスト画像の中で選択させた。その時の眼球運動を10秒間測定記録した。テスト画像中のラバーダムクランプはNo.P1,No.P2,No.200,No.206の4種とした。眼球運動測定後には,どのクランプを選択したか実験対象者に確認した。矢印の歯は右側第一乳臼歯であり,最も適合するクランプはP2となる。初回停留点の位置はNo.P1:2名,No.P2:3名,No.200:8名そしてNo.206:1名であった。初回停留点はNo.200上に最も多く,テスト画像中No.200の位置は模型写真での矢印の近くに相当し,連続する写真の提示では前画面の注目位置に次画面の初回停留点が誘導されたと考えられる。各実験対象者の選択したクランプ上に停留回数・停留時間を多く数えたが,選択した後もなお同じクランプの情報収集を継続していたとことがうかがえた。最適なNo.P2クランプを選択した実験対象者は14名中6名であった。他のクランプを選択した実験対象者に実験後質問したところ,多くが矢印の示した歯を小臼歯と答えた。実験では,模型写真で歯の形態を認識し歯種を特定しておく必要があるが,実験対象者は乳歯であることにも気付かず,「大臼歯の近心にある歯」程度の認識を得るに過ぎなかったのではないか。本実験では,模型の向きと適用する際のクランプの向きとを一致させて,実験対象者がクランプを選択する際に向きが障害にならないよう配慮した。歯の形態を認識していた実験対象者は少ないと推測され,視覚素材を提示する際には観察事項を具体的に指示する必要のあることが示唆された。以上を「ラバーダムクランプを選択する際の視知覚情報処理-顎模型を提示した場合-」と題し第45回日本小児歯科学会大会において発表した。
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