これまでヒト歯根膜組織より樹立した歯根膜線維芽細胞に周期的伸展力を加えTGF-βおよびMCS-Fの産生量を検索した結果、機械的外力により両者の産生量に有意な差が認められている。しかしながら、歯根膜由来細胞において機械外力がシグナル伝達経路に与える影響については不明である。そこで今回はTGF-β産生誘導について転写レベルでの詳細な検討を行うため、TGF-βレポーター遺伝子の転写活性化を評価する実験系の準備を進めてきた。SmadのSBE配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流に連結したレポータープラスミド(SBE4-Luc)を歯根膜細胞にトランスフェクションし、細胞内のルシフェラーゼ遺伝子の発現量を測定することで周期的伸展力よるTGF-βの転写活性を評価する。まずはじめに陽性対照細胞であるROS17/2.8およびSaOS2でのTGB-βよる転写活性化の応答を確認した。すなわち両細胞を2x10^4/cm^2の細胞密度で播種し、トランスフェクションの24時間前に無血清、抗生物質不含のOpti-MEM培地に交換して12時間培養後、トランスフェクション試薬(LT-1)を用いて各レポータープラスミド、TGF-βを加えて48時間培養を行った。その後、培養上清を取り除きLysis bufferを加えて溶解後、Dual-Luciferase Reporter Assay Kitを用いてルシフェラーゼ活性をルミノメーターで測定した。その結果、両細胞ともにTGF-β処理群はコントロールと比較して約10倍量の転写活性化がみられ、本実験系におけるSBE4-Lucレポーター遺伝子への有用性を確認できた。今後はさらに、この陽性対照細胞での応答を基準に機械的外力によるSBE4-Lucレポーターの転写活性化を評価する予定である。
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