研究概要 |
マンノース結合レクチン(MBL)は,マンノースなどの糖鎖を介してさまざまな微生物と結合し,オプソニンとして食細胞の食作用を促進する。さらに,新たに発見されたセリンプロテアーゼであるMASP-1およびMASP-2と複合体を形成すると,補体を活性化することが近年明らかにされている。MBL遺伝子多型は,感染症のみならず,自己免疫疾患や糖尿病にも関連することが最近報告されている。糖尿病は,歯周病の重要なリスク因子であり,糖尿病と歯周病に共通するリスク因子としてMBL遺伝子多型が関与している可能性が考えられる。本研究の目的は,歯周病患者および糖尿病患者のMBL遺伝子多型および血清MBL濃度を検索し,歯周病の病態および糖尿病の血糖コントロール状態との関連性について検討することである。 本年度は平成18年度から引き続き,被験者を集め,歯周病学的および糖尿病学的検査,MBL遺伝子多型解析,そして血清MBL濃度測定を行った。そして,集められたデータを解析し,統計処理を行った。その結果,糖尿病患者では健常者と比較して,有意差はないもののMBL遺伝子変異を有する者が多い傾向がみられた。また,MBL遺伝子変異を有する者は,同変異を認めない者と比較して,プロービング時に出血する歯の割合が有意に高かった。この結果から,MBL遺伝子変異により,歯周炎が増悪している可能性を示唆された。さらに,興味深いことに,血清MBL濃度は糖尿病患者における歯槽骨吸収量と有意な相関関係がみられた。一方,MBL遺伝子多型は,糖尿病の血糖コントロール状態と統計学的に有意な関連性は見出されなかったが,変異を有する者では,インスリン治療を受けている者の割合が高く、糖尿病が重症化している可能性が示唆された。
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