本研究では、歯肉線維芽細胞におけるPGE_2産生メカニズムについて、細胞内伝達情報経路のなかで重要な役割を占めるカルシニューリンの作用について、免疫抑制剤であるサイクロスポリンAとFK506を用いて検討を行った。 1.PGE_2産生 サイクロスポリンAは単独で濃度依存的および経時的にPGE_2を産生した。IL-1βによるPGE_2産生に対し増強する傾向が認められた。FK-・506を用いてサイクロスポリスAと同様の効果を検討した結果、FK-506はIL-1βによるPGE_2産生を増強した。 2.IL-1βによるプライミグにおよぼす効果 IL-1βを6時間作用させた後、ブラジキニンを30分作用させると多量のPGE_2が産生されるが、同時にサイクロスポリンAとFK-506を作用するとプライミング効果はさらに増強された。 3.シクロオキシゲナーゼー2mRNA発現 PGE_2合成酵素であるシクロオキシゲナーゼー2mRNA発現をRT-PCR法により測定した。サイクロスポリンAによりシクロオキシゲナーゼー2mRNA発現が認められ、IL-1βによる発現に対してサイクロスポリンAは増強傾向を示した。さらに詳細な検討を行うため、リアルタイムRT-PCR法による検討も行った。サイクロスポリンA単独で用量に依存したシクロオキシゲナーゼー2mRNA発現が認められた。またIL-1βとサイクロスポリンAを組み合わせることにより、シクロオキシゲナーゼー2mRNAの発現増加が認められた。 本実験結果から、サイクロスポリンA単独ではPGE_2産生に大きな影響を与えないが、サイトカインなどの炎症性因子による刺激や、歯周組織の炎症に対しては他の組織における作用とは異なり、サイクロスポリンAは炎症を促進する方向に働くことが示唆された。
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