多因子性疾患の一つである歯周炎のうち、侵襲性歯周炎と重度慢性歯周炎について、ジェネティクスの影響とエピジェネティクスの一つであるメチレーションによる影響について研究を行っている。 多くのありふれた病気は、複数の遺伝因子、環境因子、エピジェネティクスな因子などが複雑に影響し、発症および進行しているものと考えられている。特異的な上記のような歯周炎についても、これらの因子が関連しているものと思われる。そこで、本研究では、従来から行ってきているSNPs解析データを考慮し、遺伝子の転写に影響するDNAのメチレーションについて解析を行っている。 本年度は、歯周組織を形成している線維芽細胞のCOL1A1について、同一患者において歯周炎による炎症部位と治療処置において必要があり切除した非炎症部位からDNAを抽出し、COL1A1のCpGアイランド部位におけるメチレーションの比率を比較した。 その結果、侵襲性歯周炎患者においては、炎症部位と非炎症部位におけるCpGアイランド部位のメチレーションの比率には有意差が認められなかった。重度慢性歯周炎患者においては、約半数でメチレーションの比率に有意差が認められた。 SNPs解析では、侵襲性歯周炎では健常者と比較すると有意差が認められ、重度慢性歯周炎では有意差は認められなかった。 メチレーション解析およびSNPs解析の結果を踏まえ、重度慢性歯周炎においては、エピジェネティクス因子の影響が発症および進行に関連することが推測された。
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