研究概要 |
本実験はヒト歯槽骨骨膜由来細胞を用いて作製した移植片の歯周組織再生療法への可能性を検索することを目的とした。歯槽骨骨膜組織片は,本学附属病院成人歯科にて患者の承諾を得た後,歯周外科処置時に採取し、実験に使用した。本実験計画は既に本学倫理委員会の許可を得ている。歯槽骨骨膜組織を5%ウシ胎児血清(FCS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(D-MEM:Dulbecco's modified Eagle medium)を増殖培養液として37℃,5%CO_2,湿潤気相下にて培養を行い,遊出してきた細胞を初代培養細胞とした。 細胞は多層になるように1週間毎に4回,播種を繰り返してシート状にした。その後,三次元構造を有する細胞の移植片は組織学的(ヘマトキシリン・エオシン染色,アルカリフォスファターゼ(ALP)染色,von Kossa染色)と免疫組織化学的(I型コラーゲン(col-I),オステオポンティン(OPN),オステオカルシン(OC),Ki-67)検索により、Col-Iの強い陽性反応所見が認められ、さらに、OC,OPN,Ki-67の陽性細胞も観察された。その細胞シートを免疫不全マウスへの移植実験を行うことにより歯周組織再生療への応用の可能性を検討した。 移植片内部には多数の血管が形成されており,細胞成分の割合が減少していた。作製した移植片は顕著なCol-IとALP陽性反応がみられ,若干のOPN、OCの陽性反応が観察された。以上のことから,作製した移植片は自己由来の細胞と足場をもった優れた移植材と考えられる。
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