歯周ポケット細菌叢を構成する細菌種を網羅的に解析同定し、歯周病の病態に関与する細菌種、あるいは病態の個体差の原因となりうる細菌種を見出すことが本研究の目的である。 その初年度にあたり、DNAマイクロアレイで検出する細菌種のレパートリーを決定する上で、網羅性を保証するために重要な以下の2点について充分な検討を行った。 1 検出用プライマーの配列の決定 ターゲットとする16S rRNA遺伝子の塩基配列において、広範な種で保存された塩基配列が、適切な長さで連続する領域を計算し、そのプライマー対で挟まれ増幅された断片が、種の同定において遺伝子全長とほぼ同等の情報量を有することを確認した(詳細については、現在報告を準備中)。 2 歯周ポケット細菌叢構成細菌のレパートリーの極微細構成の決定 4mm以上の歯周ポケットから採取した歯肉縁下プラーク4サンプルについて、上記プライマーを用いて増幅して得た1920クローン(サンプルあたり480クローン)の塩基配列を解析した。その結果、歯周ポケット細菌叢から得られたクローンの2/3は、数種の細菌で構成されるが、残りの1/3は、1-2クローンの稀少菌種の集合体であることが判明した。サンプルによって、優性となったり稀少となる菌種も見られたほか、いずれのサンプルでも稀少菌種であるものも存在した。 これらの結果から、歯周ポケット細菌叢の多様性が、優性菌種にも稀少菌種にも存在し、それらの存在比率の違いは100〜10000倍に達することが明らかになった。これらの結果を踏まえて、網羅的かつ定量的な検出を効率よく行うためのDNAチップを設計し、その実証試験を行うことが次年度の課題である。
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