研究概要 |
本調査の目的は,全身的骨代謝と顎骨骨量との関連を解明することである。76歳,134名を分析対象とした。顎骨骨量の評価として下顎下縁皮質骨形態分類を用いた。全身的骨代謝を表す骨形成Markerとして血清中の骨型アルカリフォスファターゼ(S-BAP),骨吸収Markerとして尿中のI型コラーゲン架橋N末端テロペプチド(U-NTX)を採用した。下顎下縁皮質骨形態分類(1型,2型,3型)により対象者を3群に分け,骨形成Markerおよび骨吸収Markerの平均値を比較した。さらに下顎下縁皮質骨形態分類,性別(男性:1,女性:2),喫煙習慣(なし:1,あり:2),音響的骨評価値(若年健常者の平均値に対する割合),BMIを独立変数に,骨形成Markerまたは骨吸収Markerを従属変数として重回帰分析をおこなった。S-BAPの値は,I型:22.4±6.2,2型:27.9±10.2,3型:29.7±10.8U/1であった(Scheffeの多重比較,1型vs2型:p<0.01 1型vs3型:p<0.01 2型vs3型:NS)。U-NTXの値は,1型:29.0±10.8,2型:39.9±16.9,3型:52.2±20.3nM BCE/mM-Crであった(Scheffeの多重比較,1型vs2型:p<0.01 1型vs3型:p<0.001 2型vs3型:p<0.01)。さらに,重回帰分析では,従属変数のS-BAPまたはU-NTXに関して,下顎下縁皮質骨形態分類はいずれに対しても有意な独立変数であった(S-BAP:β:0.243,p<0.05),(U-NTX:β=0.226,p<0.01)。以上の結果は,下顎下縁皮質骨に異常所見がみられる群(2型,3型)では,正常群(1型)と比較して,骨代謝が有意に亢進していることを示唆している。
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