研究概要 |
本調査の目的は,血清中カルシウム濃度と顎骨骨量との関連を経年的に評価することである。70歳の高齢者,280名を対象とした。顎骨骨量の評価として下顎下縁皮質骨形態分類を用いた。9年間で下顎下縁皮質骨形態に変化のあった群と無かった群とに分類し,同時に血清中のカルシウム濃度の変化との関連を分析した。9年間の下顎下縁皮質骨形態の変化の有無を従属変数に,さらに,9年間の血清カルシウム,タンパク,リン濃度の平均値,性別,喫煙経験を独立変数に設定し,ロジスティック回帰分析を行った。 9年間の平均カルシウム濃度は,下顎下縁皮質骨形態に変化のあった群と無かった群で比較すると,それぞれ,男性では9.0±0.3mg/dl,9.0±0.3mg/dl,女性では9.1±0.3 mg/dl,9.2±0.3mg/dlであった。この差は女性において統計学的に有意だった。ロジスティック回帰分析の結果,9年間の平均カルシウム濃度(オッズ比 : 4.82, p=0.004),性別(オッズ比 : 3.26,p=0.001),9年間の平均タンパク質濃度(オッズ比 : 0.42, p=0.038),および喫煙経験(オッズ比:1.60, p=0.029)に統計学的に有意な関連が認められた。一方,9年間の平均血清リン濃度は有意ではなかった(p=0.58)。 このことは,特に,女性において,下顎下縁皮質骨形態の変化と血清中のカルシウム濃度が関連していることを意味している。メカニズムについては,カルシウムの吸収や排出を含めた代謝システムやエストロジェン等のホルモンが関連していると考えられた。
|