研究概要 |
本年度は、まずS.mutansの自己融解酵素(AtlA)の精製を試みた。昨年度の研究結果よりpQEベクターを用いてフルサイズのatlA遺伝子をクローニングすることは不可能であることがわかったので、他の発現ベクター(pET,pCold)ならびにDH5α以外の宿主大腸菌(JM109,XL-IBlue)を用いてatlAのクローニングを試みたが、成功しなかった。そこで、atlA遺伝子の構造を解析し、5'末端のシグナルペプチド(24個のアミノ酸から成る)をコードしている領域を削除したPCRフラグメントを増幅してpQEベクターに挿入したところ、プラスミドの構築に成功した。平行して、in vitroトランスクリプション/トランスレーション反応を用いてAtlA発現を試みた。しかしながら、現段階でAtlAリコンビナントプロテインの十分な発現には至っていない。次に、AtlAの活性部位の解明を試みた。AtlAを6分割し、各々の蛋白質に対する抗体を作成して自己融解活性阻害実験を行ったところ、C-末端のlysozyme活性ドメイン相同部位で構成される蛋白質(F6蛋白)に対する抗体(抗F6抗体)を用いた時に自己融解能がaltA欠損株と同程度に阻害された。また、抗F6抗体を用いてバイオフィルム形成能を調べたところ、自己融解活性ほど劇的ではないが、形成能の阻害が認められた。次にAtlAの活性部位蛋白質に結合するDNAアプタマーのSELEXスクリーニングを効率よく行うためには、さらに、活性部位を絞り込む必要がある。そこで、F6蛋白を2分割し(F6-A、F6-B)、同様の実験を試みた。F6-A蛋白は抗F6抗体に対する抗原性が非常に弱かったので、F6-B蛋白に対する抗体のみを作成し、自己融解活性阻害実験を行ったところ、阻害効果は認められなかった。
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