Streptococcus mutansの自己融解酵素(AtlA)は979個のアミノ酸から成り、C末端にlysozyme活性ドメインと高い相同性を示す領域を有する。atlA欠損株(Xc92)を作成し、自己融解活性をザイモグラフィー解析で比較したところ、Xc野生株にはatlA遺伝子から推定される分子量約107kDaの位置とさらに79kDaの位置に菌体の溶菌活性が認められたが、Xc92ではこの活性バンドが両者とも完全に消失していた。Xc92をS.mutansの自己融解活1生の至適温度でインキュベーションしても自己融解がほとんど認められなかった。これらの結果から、S.mutansの自己融解活性の本体がattA遺伝子産物であることがわかった。また、Xc92ではXc野生株に比べて、連鎖が異常に長くなり、まるで糸のように菌体が連なっていることが明らかとなった。これは、α崩遺伝子産物が細胞分裂の際の細胞壁の切り離しに重要な役割を果たしていることを示している。次に、Xc野生株およびXc92にっいてバイオフィルム形成能を比較したところ、Xc92はグルコースに依存したバイオフィルム形成能を完全に消失していた。スクロースに依存したバイオフィルム形成にっいても、形成量が30%減少したことに加えて、バイオフィルムの様相がかなり異なっていることが肉眼でも明瞭に認められた。電子顕微鏡下で比較すると、Xc野生株では均一なバイオフィルムが形成されるのに対し、Xc92では極めて粗造なバイオフィルムが形成されていることが明らかとなった。AtlAの精製に関してはフルサイズのatlA遺伝子をクローニングすることは不可能であったので、5'末端のシグナルペプチド(24個のアミノ酸から成る)をコードしている領域を削除したPCRフラグメントを増幅してpQEベクターに挿入したところ、プラスミドの構築に成功した。しかしながら、現段階でAt1Aリコンビナントプロテインの十分な発現には至っていない。次に、AtlAの活1生部位の解明を試みた。AtlAを6分割し、各々の蛋白質に対する抗体を作成して自己融解活性阻害実験を行ったところ、C-末端のlysozyme活性ドメイン相同部位で構成される蛋白質に対する抗体(抗F6抗体)を用いた時に自己融解能がatlA欠損株と同程度に阻害された。また、抗F6抗体を用いてバイオフィルム形成能を調べたところ、自己融解活性ほど劇的ではないが、形成能の阻害が認められた。
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