研究概要 |
口腔内細菌の歯面や歯周組織への付着,定着は辺縁性歯周炎や,う蝕の発症の重要な因子であると考えられている。本研究では,辺縁性歯周炎の原因菌であるActinobacillus actinomycetemcomitans (A.actinomycetemcmitans)の宿主組織への付着機構の解明を目的として、A.actinomycetemcmitansと細胞外マトリックス成分との付着親和性に関する研究を行った。平成17年度の研究において、A.actinomycetemcmitansがフィブロネクチン(Fn)およびコラーゲンタイプIV (CoIV)に対して高付着親和性を示す結果を得た。そこで、18年度は、A.actinomycetemcmitansのFnとCoIVへの付着に関する詳細な分析を試みた。FnおよびCoIVコートwellを用いたA.actinomycetemcmitans菌体付着反応に、可溶化FnおよびCoIVを添加したところ、菌体の付着抑制が認められた。このことからA.actinomycetemcmitans菌体表層部にFnとCoIVに対する付着因子が存在する可能性が考えられた。そこで、それぞれの可溶化タンパクと付着親和性を示す菌体タンパクの検索を行った結果、Fnに結合性を示す分子量約40KDaの菌体タンパクが確認され、同菌体タンパクがA.actinomycetemcmitansのFnへの付着に関与している可能性が考えられた。 また,本研究では口腔内細菌の付着,定着機構についての追加実験として,う蝕病原菌性ミュータンスレンサ球菌であるStreptococcus sobrinus (S.sobrinus)の歯面付着,定着因子に関する研究を行った。S.sobrinusの歯面初期付着因子と予想されているPAgと不溶性グルカン合成酵素(GTF-I)に着目し、平成17年度ではS.sobrinusのPAgとGTF-Iの機能領域部を融合タンパクPAgA-GBとして合成し、抗PAgA-GBウサギポリクローナル抗体を作製した。平成18年度では、抗PAgA-GB抗体を用いてS.sobrinus PAgとGTF-Iの歯面付着に関する機能分析を行った。菌体とヒドロキシアパタイトビーズとの付着実験に同抗体を作用させた結果、不溶性グルカン合成に伴うS.sobrinus菌体の付着は著しく抑制されたが,初期付着の抑制は微弱であった。以上の結果から,S.sobrinusの初期付着にはPAg以外の付着因子の関与が予想された。また、抗体によるGTF-Iの機能阻害はS.sobrinusの歯面付着抑制に効果的であると考えられた。
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