研究概要 |
口臭原因物質である揮発性硫黄化合物(硫化水素,メチルメルカプタン他)はFusobacteriumのような口腔細菌によって産生される物質である。揮発性硫黄化合物の骨組織への影響については未だ不明な部分が多い。そこで本研究は揮発性硫黄化合物が歯槽骨吸収過程にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的とした。平成17年度はマウス頭蓋冠由来骨芽細胞株MC3T3-E1および正常ヒト由来骨芽細胞NHOstの細胞増殖,およびそのシグナル伝達機構について検討した。両細胞ともに硫化水素の添加濃度に依存して3H-チミジンの取り込みが抑制された。しかし分化の指標であるアルカリ性ホスファターゼ活性は抑制されなかった。次に細胞増殖機構の重要な役割を担っているMAPKとの関連について検討した。細胞増殖を抑制する硫化水素濃度を24時間作用させた細胞でも,IGF-1によるERK活性の誘導能が対照群と同レベルを示しことから,硫化水素はERK酵素に対して直性的影響を及ぼさないことが明らかになった。硫化水素処理後のERK,P38,JNKのリン酸化をwestern blotting法にて経時的変化を検索した。その結果JNKは変化しなかったもの,ERK,P38のリン酸化物質が短時間でピークに達し後に減少傾向を示した。これらの結果から硫化水素による細胞増殖抑制機構はERK,p38のカスケードを介してシグナルが伝達していることが示唆された。現在,receptor activator of NK-κB ligand(RANCL)との関連を検索している。
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