本年度の研究活動は、次の3点に集約された。 (1)前年度に、Lactobacillus reuteri配合ヨーグルトの消費が、歯垢内ミュータンスレンサ球菌の層別分布におよぼす影響を検討し、ヨーグルトに添加されたスクロースの影響が示唆された。そこで、う蝕関連菌抑制効果へのヨーグルト中の糖質の影響をみるため、7%スクロース添加、スクロース未添加、7%キシリトール添加ヨーグルトによる介入研究を行った。 ベースライン時の唾液中のS.mutans陽性率は72.0%、S.sobrinusは14.0%であった。ヨーグルト摂取後のS.mutansの陽性率は、それぞれ28.0%、38.8%、55.1%、S.sobrinusでは8.0%、6.1%、6.1%で、スクロース添加・未添加ヨーグルトでS.mutansは有意に低下した。L.reuteriによる抑制効果は、検体(唾液、歯垢)、細菌の陽性率、糖質の有無で異なることが示唆された。 (2)歯垢に被覆されたエナメル質界面でのミネラル動態(脱灰や再石灰化)に及ぼすフッ化物介入効果の予備的検討をかねて、エナメル質の脱灰条件と再石灰化を促進する際のフッ化物(NaF、MFP)の作用を検討した。 950ppmFのNaFまたはMFP溶液で1日2回3分間、それ以外はpH4.5の脱灰液に浸漬するという操作を22日間行ったエナメル試料をX線マイクロラジオグラフ(XMR)で観察し、ミネラル量の変化(ΔZおよびLd)を分析した。その結果、NaF処理群はMFP処理群より有意に高い耐酸性を示したが、両者のXMR像からその耐酸性層の構造に明らかな差がみられた。 (3)糖質暴露による介入で歯垢生態系が受ける影響について検討するため、18名の被験者を対象に試料採取を行った。スクロースおよびキシリトール洗口下で形成された歯垢内のう蝕関連菌の分布とグルカン量の分析は、次年度の予定である。
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