研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、個人の微生物因子における齲蝕リスクを評価する指標として、歯垢内齲蝕関連菌(S.mutansとS.sobrinus)を対象とした層別マッピング分析の有用性を探ることにあった。国内の乳業メーカーが販売していたロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)配合ヨーグルトに着目し、齲蝕関連菌に対するプロバイオティック効果をみる介入研究を行った。層別マッピング法を用いた歯垢内のS.mutansとS.sobrinusの層別分布の変化から、ロイテリ菌配合ヨーグルトの摂取は、未配合製品の摂取より齪蝕関連菌の歯垢内での生息域を縮小させることが確認された。また、糖アルコールの一種であるキシリトールが、唾液中の齲蝕関連菌に対するロイテリ菌によるプロバイオティック効果を抑制することも明らかとなった。一方、抗菌作用と歯垢の形成抑制作用をもつフッ化第一スズによる歯垢構造と歯垢内の齲蝕関連菌生態系の変化の関連についても検討した。層別マッピング法により可能となった歯垢内の密度プロファイルの分析から、口腔環境中に残存するフッ化第一スズが、S.mutansの抑制作用よりも歯垢形成に強く影響し、歯垢の密度低下といった質的な構造変化を通じて、逆に歯垢内のS.mutansの生息域の拡大を招く可能性を明らかにした。以上の結果から、層別構造と関連した歯垢の生態系に関する情報の有用性が明らかとなった。現在、我が国では、口腔保健用の特定保健用食品として、非・低齲蝕誘発性やエナメル質の再石灰化作用を有する製品が実用化されている。歯垢細菌叢のコントロールも重要な機能性と考えられるが、この特性を評価する方法はまだ未確立で、その重要性もあまり認知されているとは言えない。今後は、機能性食品による歯垢への介入効果の評価という方向から、定量的層別マッピング法による研究を進める予定である。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 図書 (1件)
口腔衛生学会雑誌 57
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Cariology Today Vol.3-4
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Journal of Dental Health Vol.57
Cariology Today Vol.3・4
In Watanabe M, Okun O(eds) : interface Oral Health Science 2007.(Tokyo, Springer)
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