研究概要 |
○壮年期における歯周疾患の医療費への影響-職域集団における縦断研究- 背景:歯周疾患はよく知られた慢性疾患のひとつであるが、入院、外来、歯科を含む医療費の増加と歯周疾患が関連は明らかになっていない。 方法:日本の公務員(40-59歳)4,285名の一般健康診断、歯科検診および健康保険のデータを用いて、歯周疾患の医科医療費と歯科医療費への影響を前向きに3年半の間評価した。解析対象者は3カテゴリーに区分された;病的な歯周ポケットのない群、中等度歯周炎群、重度歯周炎群。心疾患、肝疾患または糖尿病の既往があるものを除いた後、多変量解析においては、年齢、性別、喫煙、BMI、高血圧で調整された。 結果:重度歯周炎群の累積総医療費は、病的な歯周ポケットのない群より21%高かった。男女とも入院割合は、重度歯周炎群で最も高かった(男性:OR=1.34,95%信頼区間:1.00-1.80;女性:OR=1.29,95%信頼区間:0.75-2.20)。男性では、重度歯周炎群の年間入院医療費は、病的な歯周ポケットを有しない群より75%高かった。外来医療費では、はっきりした傾向は認められなかった。年間歯科受診割合は重度歯周炎群で最も高かった(男性:OR=2.07,95%信頼区間:1.50-2.86;女性:OR=1.46,95%信頼区間:0.76-2.78)、歯科医療費は男女とも歯周疾患が重症になるにつれ増加していた。男女別に歯周状況によるそれぞれの疾患分類に関する年間平均医療費を算出したところ、糖尿病と胃腸疾患に関して、男性の重度歯周炎群の年間医科医療費が最も高かったが、女性ではその差は認められなかった。歯周病が悪化するほど、男女とも肝疾患の医科医療費は増加していた。 結論:特に男性において、歯周疾患は歯科のみならず入院による医療費の増加に影響していた。
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