研究課題
看護学の研究は質的研究方法やアクションリサーチなど多様な方法がとられ、研究方法の独自性を十分に理解し、的確に審査できる委員の育成が急務である。近年、日本でも疫学研究における倫理指針、臨床研究に関する倫理指針、看護研究における倫理指針など、研究倫理審査の指標となる指針は明らかにされているが、現実には、看護学研究の倫理審査では多くの課題を抱えていることが明らかになっている。そこでこの研究では、最終的には倫理審査に携わる委員のための教育資源を開発することを目的としている。今年度は、米国におけるInstitutional Review Board(施設内倫理審査委員会)で示されている、研究対象の権利を擁護するための標準化された教育訓練のための資源やガイドライン、それに関連する文献の収集、ならびに、英国におけるAction Researchの倫理審査における課題、倫理審査委員の教育体制などについて、Action Researchの専門家ならびに英国の研究倫理審査委員の経験者から情報収集を行ったり資料収集を実施したりした。また、韓国の研究者とのネットワークの中で看護学の研究倫理審査体制についての情報を収集した。日本の現状との大きな違いは、米国・英国では、倫理審査委員には事前に教育が課せられることで、そのことによって審査が適切に円滑に行われていることである。また、その際の教育資源、すなわちビデオ、参考資料、ならびにワークショップの開催など、豊富な資源や機会があることが明らかになった。今後は、これらの収集した資料を統合し、次年度は日本の看護学研究の審査体制の現状にあった教育資源の開発、評価を行う予定である。