研究課題
基盤研究(C)
看護学の研究は質的研究方法やアクションリサーチなど多様な方法がとられ、研究方法の独自性を十分に理解し、的確に審査できる委員の育成が急務である。近年、日本でも疫学研究における倫理指針、臨床研究に関する倫理指針、看護研究における倫理指針など、研究倫理審査の指標となる指針は明らかにされているが、現実には、看護学研究の倫理審査では多くの課題を抱えていることが明らかになっている。そこでこの研究では、倫理審査に対する現状について倫理審査を受けた側から調査を行い、倫理審査に携わる委員のための教育資源を開発に寄与することを目的としている。2006年に看護学の総合学会で研究を発表した1121名のうち、氏名と所属を手がかりとしてインターネット検索で住所を特定できた965名に調査用紙を配布した。418名(43.3%)から回答が得られ、その内容を分析したところ、64%が倫理審査を受けていた。倫理審査に要する期間が3週間から1ヶ月以上と回答したものが50%みられ、倫理審査委員会の開催頻度が少ないことや、研究実施場所と大学・研究機関と2ヶ所で審査を受ける必要がある場合があることもあいまって、審査に時間がかかっていることが明らかになった。迅速に審査を実施していく体制を整えていくことは、看護研究の発展のためにも重要な課題である。倫理審査の審査員の質についての指摘や審査結果の不公平感を指摘した記述回答もみられ、看護学研究を熟知した審査委員が審査委員会に入ることの必要性も述べられていた。一方、社会学的研究のリスクが過小視されていることが文献で指摘されている。これらの課題に対し、審査者、申請者の両方が活用できる審査の基準やガイドラインを明示すること、納得ができない場合の対応窓口を設けるなどの対策が必要である。