研究概要 |
【目的】血管外に漏出した薬剤がどこへ吸収され,罨法がその吸収速度にどの程度関与しているかを詳細に調べた研究は少ない.したがって今回は,罨法が漏出薬剤の吸収に与える影響について検討することを目的に,基礎的実験を行った. 【方法】血管外漏出時ラット皮膚組織に炎症反応を引き起こすことが明らかとなっている薬剤として,ジアゼパム注射液5mg(セルシン【○!R】,武田薬品工業)およびフェニトインナトリウム注射液250mg(アレビアチン【○!R】,大日本住友製薬)を使用した.実験には,Wistar系雄性ラットを36匹用いた.薬剤の漏出は,1匹につき背部皮下へ2箇所,両側の内側伏在静脈周囲に1箇所ずつ,計4箇所に行った.背部皮膚は,つまみ上げ23ゲージの注射針を皮下組織に刺入し,薬剤を0.3mlずつ漏出させた。内側伏在静脈周囲への漏出は,一度血管内に注射針を刺入してから先端をずらし0.2mlずつ漏出させた.薬剤漏出後皮膚温を40〜42度に保ったものを温罨法,17〜20度に保ったものを冷罨法とした.罨法は,ディスポーザブル手袋(検査用手袋センシタッチ・ノーパウダー,東レ・メディカル)に温湯もしくは冷水と氷片を入れたものを使用し,薬剤漏出直後より30分間継続して行った. 【結果】セルシン【○!R】漏出1時間後のジアゼパムの血中濃度平均値は,対照群が514ng/ml,冷罨法群が696ng/ml,温罨法群が558ng/mlであり,対照群と温罨法群の値は,類似していた.漏出2時間後の血中濃度平均値は,対照群が522ng/ml,冷罨法群が732ng/ml,温罨法群が655ng/mlであり,漏出1時間後と同様,対照群と温罨法群の値は,類似していた. アレビアチン【○!R】漏出1時間後のフェニトインナトリウムの血中濃度平均値は,対照群が9.7ng/ml,冷罨法群が6.4ng/ml,温罨法群が9.3ng/mlであり,対照群と温罨法群の値は類似していた.漏出2時間後の血中濃度平均値は,対照群で13.7ng/ml,冷罨法群で9.1ng/ml,温罨法群で13.0ng/mlであり,漏出1時間後同様,対照群と温罨法群の値は類似していた.
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