研究概要 |
本研究はベンチマーキング作成に必要な急性期病院における転倒予測アセスメントツールを検討することを目的とした3年間にわたるものである. 本年度は初年度であり,(1)「ベンチマーキング」の概念の明確化および「急性期病院の転倒予測アセスメントツール」とベンチマークについて文献検討(2)研究者らが開発したアセスメントツールを使用し,実際の転倒者について根本原因分析(root cause analysis)を行い,比較検討することを目的とした. その結果,(1)については,ベンチマーキングは優れた業績を上げている会社の業務プロセスを分析し、自分たちのやり方との相違点を明確にしたうえで、ベストプラクティスの実現策を作ることを指し,現状を「変える」ことが根底にあると理解できた.また,専門家として北沢直美氏(昭和大学医療安全管理室,看護師)を招いて「転倒・転落のベンチマーク」について講義と討議を行った.米国のJCAHOのNPSGs(National Patient Safety Goals)として転倒転落予防が明記され,2006年は転倒転落による患者の傷害のリスクを減らすことや転倒転落の予防策を実施し、その効果を評価することにベンチマーキングが使われていた.また転倒率についてはinpatient fall rateの在院日数1000日対は病院の事務での情報が必要であることが確認できた. (2)A病院で起きた転倒者のデータから1件毎に転倒の環境的要因、個人要因、認識、看護スタッフ数などを分析した.転倒者は概ねアセスメントツールの点数が高い者が転倒していた.しかし,一部3点以下で転倒した患者について根本原因分析をした結果,手すりのキャップやベッド柵などの環境的要因が関係している例が多いことが示唆された.これらの要因とアセスメントツール項目をどのように関連づけるかが今後の課題である.
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