本研究は、看護師の経験した重症障害新生児事例に関する語りから、子どもの最善の利益とケアを明らかにした。「ケアの倫理」とは、倫理原則よりもその社会の倫理思想体系の基準に沿う分析により、個々人の状況の文脈において理解しようとするものである。従って、実際に臨床の場で起きている事例から子どもの最善の利益とケアを明らかにしたことは、有意義であったと考えられる。 看護師が語った重症障害新生児の最善の利益やそのケアの根拠は、看護経験の積み重ねの中で、真相を心で感じ知った臨床の知であると考えた。このことは、倫理的意思決定において、看護師の意見は根拠がないとして認めていない医師たちへ警告を鳴らすと思われる。 明らかにされたケアの1つには、看護師自身が自分の価値観を認識し、親の価値観を知ることであり、ナラティヴ倫理の活用が考えられた。しかしNICUという救命が優先される臨床場で、看護師が内省する"時間と場"、親が語れる"時間と場"をどのように確保するのか、また親に語ってもらった価値観をどのように、倫理的意思決定の場に活かすのかということが課題となった。
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