本研究の目的は、新生児看護の倫理の一つとして、法的な解釈も視野にいれ重症障害新生児の最善の利益を守るケアを構築することである。データは、NICUと重症障害児施設の看護師のインタビューにより収集した。インタビューデータの分析は内容分析とし、法的な部分は、弁護士の助言を得た。 その結果、看護師が語った重症障害新生児の最善の利益やそのケアの根拠は、看護師の臨床での看護経験の積み重ねの中で、物事の真相を心で感じ知った臨床の知であると考えられた。看護師が語った子どもの最善の利益に共通することは、【親の愛情】であり、親が子どもの存在することを認め、生きる意味や生まれてきた意味を見出し、家族として認められることであった。親が子どもの存在を認められない根拠としては、親の障害に対する価値が影響していると考えられた。ケアとしては、まず看護師自身が自分の価値観を認識し、自分とは異なる親の価値観を知ることであり、ナラティヴ倫理の活用が考えられた。ケアを行っても親が子どもの存在を認めない事例では、子どもの治療を差し控えることも最善の利益とした。親による治療拒否があり、児童虐待のネグレクトの一形態である医療ネグレクトの場合には、親権喪失宣言審判申立を行い、それを「本件」として、本案審判の効力が生じるまでの保全処分とし、親権を一時的に停止して、親権の代行者を選任する「審判前保全処分」を活用できる。 子どもの治療に関する親の意思表明は、診療録の記載はもちろんのこと看護師も関わり、看護記録に詳細に明記する必要がある。
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