研究課題
認知行動療法を活用した褥婦への長期阻嚼指導の有効性を検討するために、研究倫理審査委員会の承認を得て無作為化比較研究を行った。関東近県で研究協力が得られた総合病院に入院中の褥婦を対象に、研究の趣旨や方法、倫理的配慮について口頭及び文書で説明して調査協力依頼を行い、66人から同意が得られた。コンピュータで作成した乱数表を用いて対照群、介入群、各33人に無作為に振り分けた。介入前の2群の対象の属性・特性(年齢・BMI・咀嚼達成度・睡眠時間・STAI得点等)に有意差はみられなかった。対照群には1口30回咀嚼を行って、月1回の調査用紙に回答するよう依頼した。介入群には対照群と同様の依頼のほか、15分以上の食事時間の確保と1口30回咀嚼に対する達成度を毎日記録し、週1回体重測定を行うよう依頼した。介入群には、認知行動療法を活用した介入を行った。6ケ月間の介入期間を継続できた人を対象に、いくつかの指標を用いて長期咀嚼指導の有効性を分析した。1か月時のBMI・食事時間達成度・咀嚼達成度・睡眠時間に有意な差はみられなかった。しかし、STAI得点は対照群より介入群が低い傾向がみられた。2か月時では、対照群より介入群は睡眠時間が短く、運動頻度が少ない傾向がみられた。3か月時では対照群より介入群は運動頻度が少なく、介入前より食事がおいしいと感じる者が多い傾向にあった。4か月時では、対照群より介入群は意識しなくてもかむ回数が増え、介入前より食事がおいしいと感じる者が多い傾向がみられた。5か月時では対照群より介入群が、介入前より食事がおいしいと感じる者が有意に多かった。6か月時では、対照群より介入群は意識しなくてもかむ回数が増え、便通がよくなった者が有意に多かった。認知行動療法を活用した介入は、咀嚼による健康認識が高まることが示唆され、1口30回咀嚼指導の意義がみとめられた。