研究概要 |
前年度に完成したシステムを研究者間で使用し,いくつかの改善点が明らかとなった。これらのうち改善不可能であった問題は,画面の文字の大きさと入力する数字の大きさであった。これらは,ブラウザの表示を大きくすることで,多少の改善を見たが,視力が弱くなった高齢者や糖尿病性網膜症などを患った患者に対しては入力を困難とする原因となるため,今後なんらかの改善が必要である。 改善可能な問題を修正し,20代前半の青年期の男女13名を対象に予備調査を行った。使用マニュアルを作成し,操作方法が分からなくなったときに対応できるように配慮した。その結果,操作方法につては,概ね理解できたとの回答であったが,数字の入力の仕方は13名中6名が分からなかったと答え,一部の画面の表示の仕方が困難であったとの回答が13名中2名から得られた。この点は,使用方法の理解による問題と考えられた。臨床テストの対象者は"高齢者であることが予測されるため,マニュアルでのこれらの説明を強化し,口頭による解説も加えることとした。 4名の糖尿病患者(40代1名,50代1名,60代2名)にPDAを約1ヶ月貸し出し,その間のセルフケアの内容を入力してもらうよう依頼した。4名全員がPDAの使い方をすぐに理解したと答えたが,1名は文字の大きさの問題から,1ヶ月間PDAを使い続けることは出来なかった。1ヶ月後の評価で,自己管理への意識が強まった,紙に書くより良い,セルフケアを継続できそうであるなど,PDAを使ってセルフケアを行うことに対するポジティブな回答が得られた。また,このシステムを継続して使いたいとの評価も得られ,PDAを使ったセルフケア支援の有効性も認められた。一方で,インターネットなどを使ったことのない高齢者が使用する際は,操作が困難と感じる可能性も示唆され,今後の検討課題である。
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