18年度は、前年度の先天性心疾患の術後に水分制限をうけた子どもに対するインタビューの分析より得た仮説を元に、水分制限の厳しくない施設で子ども13人に参加観察とインタビューを実施し、理論的サンプリングを行った。更に、そのデータと、心不全に関するフィジカル面のデータを比較し、データ間の整合性を検討した。 まだ詳細な分析は検討中であるが、水分制限に対する子どもの体験をコーディングしたものは下記の通りである。 (1)飲水方法を工夫する。(a.大切にのむ、b.一度に飲まず小分けする、c.ゆっくり嚥下する、d.考えて飲む)(2)口渇に備える。(a.口渇の発生を抑える、b.口渇が起こった時のために水分をとっておく)(3)勝手に飲まない(a.自分では測れない、b.自分では集計を出せない)。(4)たくさん飲むのは身体に悪い。(5)必要な水分量は何となく分かる。(6)我慢する。(a.欲しくて我慢が辛い、b.欲しいけど我慢できる、c.日常だと欲しいが、今は欲しくないので我慢できる) これらから、子どもは医師や看護師、保護者の説明と自分の身体感覚を常に比較しており、説明と身体感覚が一致しない場合に葛藤が生じやすい傾向にあった。その葛藤の代表となるものは、(6)我慢する であり、多くの子どもは自分の気持ちが水分を欲しているか、身体が欲しているかを冷静に判断でき、自分に必要な水分量もだいたい何ccと数値を言えるほどの判断能力があるが、それに根拠がないということを自覚していた。そのため、大人から与えられた説明に闇雲に従っているが、本当にそうなのかという疑問もあり、「自分のせいになる」という不安から自らの判断力を放棄することによって、混乱が波及しやすいということまでは明確になってきた。 フィジカル的なデータとの関連をみると、心不全が起こった子どもがいず、胸水があったとしても生活に支障を来す程度ではなく様子観察で退院できる程度であったため、コーディングとの比較で差が生じていない。
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