平成19年度は、医療的ケアが必要な重症心身障害児(者)の母親のインタビューから「外傷後ストレス障害」に関する分析を行い、ケアモデルを検討する事を目的に、次のように研究を進めた。まず、医療的ケアに関する母親の心的外傷体験を検討するために、小児・精神看護の専門家、在宅支援に携る看護師、米国の在宅支援専門家を交え、インタビュー分析結果を検討し、医療的ケアを必要とする重症心身障害児の母親に確認した。その結果、心的外傷の体験と思われる状況や出来事は、「医療的ケアの決断」「医療的ケアの決断の評価」「医療的ケアの生活影響」に関する場面にみられ、それぞれの場面は関連しながら心的外傷の体験を構成していることが明かになった。次に、インタビュー結果、重症心身障害児親の会、小児看護・在宅看護・精神看護専門家の討議から、心的外傷の体験を予防するためのケアモデルを構築した。これまで医療職の判断に基づくケアマニュアルは開発されていたが、母親のナラティブをもとに開発したケアモデルは無いため、医療的ケアの決断に関連した母親の心的外傷を予防する支援として、新たな視点となりうると考える。 研究成果は報告書にまとめ、協力を得た施設、検討会に出席した看護師、重症心身障害児親の会、全国の障害児医療専門病院、看護大学などに贈呈し、研究成果の波及を図った。
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