研究概要 |
昨年度に引き続き,継続支援を続けた対象患者は18名(男性7名,女性11名)である。 4ケ月以上長期的に弁当箱法を活用した食事支援を行った患者の言動から,弁当箱法を活用した食事療法において患者がどのような目安を持っているかを,事例毎にKJ法を用いて分析した。患者Aのもつ目安は,【原因と行く末は知っている】【栄養素・調理法を‘知る・知らない'】【日々の食事に歯止めをかける】【3:1:2に‘遠い・近い'】【弁当箱法は工夫をすれば使いやすくて満足だ】【しっかり詰めた弁当は,お腹が空いても身体が軽くて調子いい】が抽出された。過去に生じたこと(食べ過ぎた等)と将来に生じること(合併症等)は知っていても,今をどのようにしたらよいかが分からない患者が,弁当箱法を活用することで,実感を伴う確かなものを作りあげていくことが示された。事例Bの目安は,【血糖バランスは,実生活の中では乱れるもの】【ものさしは自分】【基本は,指示カロリー・栄養バランス・血糖バランス】【確かめる・確かにする】【骨の髄まで】が抽出された。糖尿病の食事療法を良く知り取り組む患者でも,生活状況の中で不安定になる血糖状態を整えることに弁当箱法を活用し,それによって食事の妥当さを確かめることは,同時に自分自身のあり方をも確かにしていくことが示された。 弁当箱法を活用した食事支援は,糖尿病の食事療法として求められる食事の課題と,患者が今まで培ってきた食生活とに接点を作りだし,その人に確かなものを創り上げていくことに貢献することが示唆された。今後は,全事例の分析を進めることと,患者の目安形成を支援する看護援助について明らかにすることが課題である。
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