研究概要 |
幼児以上の口唇口蓋裂児を持つ母親23名(岡山県、福岡県、広島県、山口県、島根県、大阪府在住)から研究協力者として申し出があり、前年度実施できていなかった3名に、「心的外傷となる言葉や態度、それを乗り越える方策について」インタビューを実施した。また、父親6名からもインタビューを行い、対象とした。 口唇口蓋裂の子どもを持つ母親および父親が社会から受けた心的外傷について言葉、態度のレベルで抽出し、それを乗り越えた方策について(1)医療者との関わり、(2)社会との関わり、(3)患児の回復、(4)自己の成長、(5)家族の成長の視点から分析を行った。 分析を行う中で、治療側の医療者との早期接触・治療説明が困難を乗り越える大きな力となっていることが明らかになった。特に、産科医による出生前告知の直後に治療側医療者からの支援を受けている母親が肯定的な意志をもつて療育に当たっていることがわかった。 この状況を量的研究からも検証することが重要と考え、新たに、出生前告知を受けた母親31名を対象に質問紙調査を行った。本調査は、インタビューと同様の医療機関で治療を受けている患児の母親を対象とした。 分析は、産科側で行っている説明の有無および治療医受診の時期と母親の気持ち(告知直後・出産後)との関連について平均値の差の検定(Mann-WhitneyのU検定,p<0.05)を行った。これらの結果からも、出生前の治療側受診が母親の再起や適応の気持ちを高めていることが明らかとなった。 以上、インタビューと質問紙調査の結果から、口唇口蓋裂児をもっ母親や家族が社会から受ける心的外傷の要因となる事柄およびそれを乗り越えるための方策について考察を行った。
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