目的:尿失禁症状を有する認知症高齢者に対し、排尿自覚刺激行動療法(Prompted Voiding、以下PV)を活用し尿失禁の改善を図るケアシステムについて検討する。 成果: (1)PVを取り入れた事例分析について:認知症および要介護高齢者のための尿失禁の改善を目的として、PVを取り入れたケアプランを展開した13名の事例について分析した。その結果、尿失禁改善群は、蓄尿機能が良好な機能性尿失禁の事例であった。機能性尿失禁を有する高齢者に対しては、尿意の訴えがない認知症高齢者の方でも、排尿間隔を把握し誘導すること、尿失禁がなく排泄が成功した時に賞賛の言葉がけを行うことで、排泄障害の改善に成功していた。 (2)認知症高齢者の排泄ケアの実態について:東北6県の介護保険施設を対象にアンケート調査を実施。認知症高齢者の排尿ケアにほとんどが対応困難と感じており、その内容・最も対応困難としてはおむつに関連するものが多いことが明らかとなった。排尿誘導の内容は、ほとんどが尿意を訴えた時に誘導(随時誘導)、約8割が施設で決めた時間に誘導(定時誘導)、約半数が排尿(量)日誌でパターンを把握・誘導し、尿失禁の積極的改善目的に排尿誘導を取り組んでいるのは4割に満たなかった。 結論:PVは、機能性尿失禁を有する認知症高齢者の尿失禁を改善できる可能性を有するが、認知症高齢者の排尿ケアの実態を更に分析し、具体的な適用基準、実践への導入方法について継続して検討を行うことが必要である。
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