研究概要 |
女性労働者のSOCと職業性ストレスとの関連について検討した。具体的には,S県の事業所553社の女性労働者に質問紙調査と返信用封筒を送付し,3,042人より回答を得(回収率30.4%),有効回答数2,906人(平均年齢38.1±10.1歳)を解析対象とした。調査内容は属性,生活習慣,職業性ストレス簡易調査票,SOC短縮版である。解析方法はSOC得点を平均点にて2分して(53点未満,5a点以上)従属変数とし,SOCとx二乗検定において有意な関連がみられた要因を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。その結果,属性、生活習慣との関連では,年齢,喫煙有無,睡眠時間,主観的健康観(P<0.001)と有意な関連がみられた。また,仕事のストレスの原因と考えられる因子では,仕事の量的負担,職場の人間関係ストレス,仕事のコントロール度,技能の活用度,仕事の適性度,働きがい(P=0.04〜<0.001)と有意な関連が認められた。ストレスによって起こる心身の反応では,活気がない,イライラ感,疲労感,不安感,抑うつ感,身体愁訴(P<0.001)とそれぞれ有意な関連が認められた。ストレス反応に影響を与える他の因子では,上司からのサポート,同僚からのサポート,家族・友人からのサポート,仕事や生活の満足度(P<0.001)と有意な関連が認められた。女性労働者は,近年,深夜業務の緩和など環境が大きく変化し,身体的、精神的負担が重くなってきている。そのなかで女性が仕事との関連で人生の中に意味を見いだせることや人生における出来事をうまく解決できるという自信を持つというストレス対処能力(以下SOC)の感覚が強いことは重要である。今回,SOCが職業性ストレスの原因と考えられる因子,ストレスによって起こる心身の反応,ストレス反応に影響を与える他の因子と関連があることが明らかになった。今後,女性労働者において,SOC得点をあげるようなプログラムなどの介入によって,職場でのストレスが軽減でき,働きやすい環境を整備できる可能性が示唆されたことは大変意義深いと考えられる。
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