研究概要 |
【目的】本研究の目的は,本人はもとより介護家族の就労が障害され,在宅介護の困難性があり,施設入所予備軍としてハイリスクでもある若年認知症者および家族介護者の双方のQOLをめざした包括的な地域生活支援方法を縦断的な追跡により開発し,地域生活継続の可能性を探り,支援のあり方,方法および必要な施策を明らかにすることである.本研究では,若年認知症者と介護家族グループに対し,アートセラピーと相互交流の会を3カ月間実践し,その効果について総括的な評価を行った. 【方法】1.若年認知症者の発達とストレングスを支持するアプローチで,若年認知症者と介護家族のセルフヘルプグループを形成し,相互交流の場として発展させ,個別の能力開発を目的としたアートセラピーのプログラムを3カ月間実践展開し,精神症状,行動,生活機能,情緒的反応,コミュニケーション能力等の改善について継続的に効果測定した.2.介護家族のグループと同時開催で,開催時間・回数も同様にアートセラピーを実施するが,1カ月に1回は家族カウンセリング及び家族の相互によるセルフヘルプグループの形成を目的に別室で行った.実施期間:2005.8〜2005.11 【結果及び考察】若年認知症者と介護家族グループを対象に,アートセラピーを3カ月間にわたり実践し総括的評価を行った結果,1.本人の能力開発と介護家族の参加交流のための非日常的な場としてのアートセラピーの意味と効果,2.アートセラピーのプロセスの中で過去の回想,経験を語り合う場面での仲間・関係者との相互交流による効果,3.感性の表現によるアートセラピーの成果を本人,介護家族が相互に肯定的に能力を発見し認め合う体験の効果,4.相互交流による家族のポジティブな変化と支え合いの効果がみられた.以上からアートセラピーによる効果は,(1)本人と家族各々が,日常的に問題の渦中に置かれ孤立化している状況から開放され,非日常的で肯定的な場づくり,(2)感性の表出によるアートをめぐる相互の承認により安心感,自己効力感,満足感を高める,(3)相互交流による支え合う関係づくりを深めた結果と関連すると考えられる.今後は,さらに本人と介護家族グループをエンパワメントし,活動を拡充したい.
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