本研究の目的は、急性期の治療を受ける高齢患者のせん妄の発症を予測するためのリスク・アセスメント・ツールを開発し、さらに開発したリスク・アセスメント・ツールを活用したせん妄予防ケア・プログラムを開発することである。平成17年度は研究の第一段階として、せん妄のリスク・アセスメント・ツールを作成することとした。 先行研究の文献検討および平成16年度に研究代表者が実施した看護師へのフォーカス・グループ・インタビューで得られた臨床看護師のせん妄のアセスメント構造から、入院早期のせん妄発症に関連する要因の概念枠組みを作成した。本概念枠組みは、「急性期にある高齢患者」と「内的・外的環境変化の体験」の2つの概念から構成している。「急性期にある高齢患者」には『コミュニケーション能力/適応力の低下』『せん妄になりやすい病態/治療』の2つのサブ概念を、「内的・外的環境変化の体験」には、『病態/入院治療に伴う苦痛』『生活パターンの崩れ』『環境変化に対する知覚/反応』の3つのサブ概念を置いた。さらに、各サブ概念について合計23の下位項目を設定した。 本概念枠組みに基づいてデータ収集用紙を作成し、急性期の内科治療を目的に入院した65歳以上の高齢患者を対象に、入院から3日間にわたる前向きデータ収集を現在、行っているところである。分析方法は、本概念枠組みによるせん妄の発症要因の有無による入院3日以内のせん妄発症率の差の検定、有意差の認められた要因についてのロジスティック回帰分析を行う予定である。
|