本研究は、継続的な支援を必要とする対象本人・家族に対して、より専門的・技術的な機能でもって援助提供する家庭訪問援助の特質と、その実践能力の明確化に取り組むものである。 調査項目は、1看護職の意図、2看護職の行為である。看護職の意図は、家庭訪問援助再現記録をもとに記述する。看護職の行為は、看護職の意図が方向づける看護職の行為を看護職の意図に対応させて記述する。研究対象は、熟練看護職による家庭訪問援助過程とし、特に精神保健・難病対策・虐待などへの家庭訪問援助過程5事例から情報収集・調査・分析した。 より専門的・技術的な家庭訪問援助の特質として、以下のものを確認した。すなわち1必要時本人と連絡が取り合え、保健師に相談できる関係を形成する、2生活状況・病状悪化の可能性も視野に入れて、援助ニーズ分析・援助提供する、3対象の介護・育児・療養生活能力に見合ったサポート体制の組み方を検討する、4対象自身の存在とこれまでの人生を肯定的に受け止められるようにする、5対象の保健事業の利用可能性から、地域の保健医療サービス提供システムを構築する、6対象の援助ニーズ・生活状況・病状悪化の可能性について、他職種の判断・意見を取り入れ、保健師の援助目標・方法の適切性と修正の必要性について検討する、であった。そして「対象本人・家族の思いや希望を把握し、家庭や地域社会の中で対象がその人らしく生活し、その人の価値観に見合うように看護援助の優先度を判断する」という特質はより随所に現れていた。 また看護職に求められる実践能力としては、1対象を理解し、その援助ニーズを適確に判断できる、2生活状況・病状悪化の可能性を予測し、早期対応できる方略を検討できる、3対象の介護・育児・療養生活能力に見合ったサポート体制の組み方を検討し、そこから地域の保健医療サービス提供システムを構築できる、ことが必要であると考えられた。
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