研究概要 |
平成17年度は、宮内省楽師・陸海軍軍楽隊員・東京音楽学校在学者の3データ群についてそれぞれデータベースを設計し、そのうち宮内省楽師と陸海軍軍楽隊員のDB化を進めた。宮内省楽師については、平成12年度科研報告書のデータ(約240人)をもとに、その後判明した担当洋楽器、生没年・履歴情報を補足した。陸海軍軍楽隊員については、谷村政次郎氏が作成されたデータ(約4,100人)にもとづき、書式・記号等の統一を図りながらデータベース化を進め、今後おもに退役後の職歴などを他の名簿類から追加する予定である。東京音楽学校在籍者については、基礎データとなる『東京音楽学校一覧』を複写し、データベースを設計した。昭和16年までの本科と師範科の卒業生は約2,600人だが、中途退学者や選科在籍者を加えた在籍者総数はその数倍に膨らむと考えられる。軍楽隊と東京音楽学校のデータベースから、職種間・地域間の移動を明らかにしたい。 邦楽については、戦前の東京市に在住していた音楽専業者に関する2種の統計資料(『明治41年東京市市勢調査職業別人口表』および『警視庁統計書』明治38年〜昭和11年)の分析にもとづく論考を発表した。雅楽をのぞき、官庁や学校とほぼ無関係に活動していた邦楽の専業者については、上記の3種のデータベースのような、戦前期を通覧できるようなデータは作成しがたい。しかし、統計資料や名簿類からいくつの時点における音楽ジャンル別・地域別の動向は把握できる。次年度もその方向をめざして名簿の収集等を進める。
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