平成18年度は、宮内省楽師と陸海軍軍楽隊員のデータペースを作成した。宮内省楽師の動向については、楽道保存賜金をはじめとする戦前の文化政策および戦後の宮内省改革とからめ通時的に考察した論考をまとめた。雅楽以外の邦楽の音楽家に関しては、『明治41年東京市市勢調査職業別人口表』にもとづいて東京市内で最も邦楽専門家数の多かった浅草区・日本橋区・京橋区を比較し、その背景となった音楽活動を考察する論考をまとめた。 陸海軍楽隊員については、幹部をのぞき退役後の職歴(音楽職とは限らない)がそれほど判明しないので、退役後をふくめた全面的な職歴の追跡は限界がある。しかし、時期をかぎれば、活動写真館の楽師名簿との突き合わせ、年鑑類からの台湾・朝鮮・満州などでの活動者の洗い出しなどはある程度可能であるため、その作業をすすめた。今後、これらの成果を学会等で発表する予定である。 東京音楽学校のデータベース作成は、本科・師範科など正規コース卒業者に限れば2600名程度だが、実際にはその数倍にあたる選科(実技科目のみ履修)在籍者や中途退学者などがあり、また作業の結果、データベース設計の手直しも必要になったため、入力作業に当初の予測より大幅に時間がかかり、年度内にデータベースを完成するに至らなかった(ただし、明治期と昭和期については入力済み)。今後も作業を継続して、できるだけ早くデータベースを完成させ、戦前の東京音楽学校入学者とその進路の全体像を把握する一歩としたい。
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