研究概要 |
これまでの研究において、自己の内面とインタラクティブに対峙するデッサンツール「ThinkingSketch」の研究開発を行った.ThinkingSketchは人(ユーザ)とコンピュータプログラムのインタラクションを通じて「デザインイメージ」を自動生成するアプリケーションである.人(ユーザ)はマウスのフリーハンド操作で種となるパターンを作り出し,これらのパターンを変形,再配置することにより多様なデザインイメージを生成することが出来る.ThinkingSketchは高速に画像生成を行うので,人(ユーザ)はコンピュータとのタイトなインタラクションを体験しながら,良いと思われる作品について自問し内省を繰り返す.その結果として人(ユーザ)は自分自身の中にある芸術的なデザインテイストを生成制限規則という形で顕在化出来る.本研究では「作品生成装置」のシステムを拡張し、コンピュータとマルチメディアによる環境生成装置「饗応する部屋」の実現を目指している。「饗応する部屋」は環境をインタフェースとする表現メディアであり、身体性と知覚の遊離・統合と再構築のプロセスを対話的に体験する空間である。前年度の研究では、ユーザ自身の身体感覚と「饗応する部屋」のインタラクションを通して、浮遊感・疾走感・没入感・圧迫感やそれらの感覚に付随して心的イメージを喚起するものであり、インタラクティブなメディア・アートへの応用と拡張性が確認できた。 本年度は、多様な環境のデジタルアーカイブスを作成し、継続的に「響応する部屋」のソフトウェア・ハードウェアの開発を行った。2006年9月2日〜10月9日にハードウェアとソフトウェアを一体にした新たな表現メディアとして「響応する部屋」のプロトタイプを制作し、金沢21世紀美術館においてインスタレーションを行った。約40日間で4万5千人の観客が訪れ、多くのフィードバックを得ることが出来た。このことから、「響応する部屋」において提示する情報空間が、サイバー空間における情報配置の編纂にも有効であることが明らかになってきた。現在、研究期間終了後も人工知能学者や情報工学者と連携し「アクセスによる情報編纂」という課題のもと「響応する部屋」から拡張した新たなサイバー空間の情報提示手法について研究を継続している。
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