研究の方法は基本的には、歴史的研究と共時的研究の併用です。歴史的研究では、次の2項目を特記しておきます。 1.東アジアの特異な祭祀芸能「目連戯」の総括をおこない、この報告書を2006年度に刊行します(野村伸一編著『東アジアの目連戯-目連救母伝承と芸能』、風響社、2006年秋刊行予定)。また論文「観音の姿態変容と東アジアの演戯文化」発表(裏面参照)。 2.2006年2月24日、25日に韓国高麗大学民族文化研究院民俗学研究所主催の国際学術討論会、『18世紀東アジア公演文化』に参加して、発表をしました(発表原稿は野村伸一「目連戯からみた近世東アジアの芸能空間」高麗大学校民族文化研究院民俗学研究所編『18世紀東亜細亜〓公演文化』、2006年、275-289頁、ソウル)。 一方、共時的研究では、中国福建省と沖縄県波照間島の2箇所で新たな記録を取りました。その概要は次のとおりです。 1.中国福建省政和県楊原村の四平戯 四平戯は明代の四平腔という曲調を伝承したものと考えられています。今日の福建ではまだあまり研究が盛んでなく、行政からの支援もほとんどない状態です。これは楊源の村民による1年二度の祭祀儀礼の一環としておこなわれる貴重な祭祀芸能です。これについては「四平戯の世界」としてホームページ上で公開済みです(http://web.hc.keio.ac.jp/~shnomura/shiheizu.html)。また2006年度の『日吉紀要言語・文化・コミュニケーション』No.36に同題で発表します。 2.波照間島のムシャーマ ムシャーマは旧7月の盆行事のなかに、旧6月の豊年祭の一部がはいったもので、独特な祭祀芸能がみられます。これを東アジアの霊魂供養芸能のひとつとして観察し、記録しました。この記録もホームページ上で公開しておきました(http://www.flet.keio.ac.jp/~shnomura/mushama.html)。
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