前年度に引き続き、歴史的な研究と共時的な研究を併用しました。I.歴史的研究数年来の研究の成果として、野村伸一編著『東アジアの祭祀伝承と女性救済-目連救母と芸能の諸相-』(風響社、2007年、全524頁)を刊行。本書は二部構成。そのうち第一部の概説篇論考・日誌・図録(35-316頁)は編者野村によるもの。本書では東アジアの祭祀芸能のなかで特異な位置を占める目連戯という芸能を中国演劇史だけでなく、朝鮮と日本の宗教文化史の上に位置づけて論じた。II.共時的研究1.沖縄本島北部のシヌグ、ウンジャミ調査シヌグとウンジャミを一連の祭祀とみて、これを東アジアの原初の農耕感謝儀礼の系譜上に位置づけることを考えている。2.台湾鹿港の祭祀現況調査鹿港は媽祖信仰だけでなく旧来の祭祀伝統が今なお濃厚な地域である。その一端を現地調査し、これを図録としてウェブ上で公開した。「台湾民俗誌(図説)-鹿港から」。(http://web.hc.keio.ac.jp/~shnomura/taiwanl.html)。3.中国浙江省舟山島定海および普陀山の祭祀と芸能調査この海域は古来、越族の生活したところであり、その海洋文化は日本や朝鮮に大きな影響を及ぼしている。また海天仏国といわれ、とくに観音信仰が顕著である。調査の一部は「今日の普陀山(図録)」にて公開した(http://www.flet.keio.ac.jp/~shnomura/Putuoshan/putuoshan.html)。4.中国広東省汕尾市城区の旧正月における奉納芸能の現地研究汕尾では節日や神の誕生費に海陸豊劇の名でよばれる演劇が盛んに奉納される。これを三週間余りにわたって現地調査した。その概要は「東シナ海文化の現場-2008年汕尾、海陸豊劇による旧正月」にて公開した(http:www.flet.keio.ac.jp/~shnomura/Hailufeng/Heilufeng.html)。
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