集約的な市街地変容による景観変化をみることができる阪神淡路大震災の復興市街地における継続的調査結果について、景観から地域環境の持続に関する課題を分析し、総括的まとめを行った。この課題の分析から、特に低層市街地における共同住宅の影響が顕在化してきたことがわかり、芦屋における共同住宅の景観課題についての調査を行った(調査結果の分析検討は来年度に実施する)。こうした知見の蓄積のうえに、特徴的な景観変化のみられる市街地を抽出し、調査を実施しているところである。 特に、多様な既成市街地の類型をもつ大阪市の市街地のなかから、工業系混在用途型市街地から住居系市街地へと移行しつつある地区について、土地利用変化とそれにともなう建築空間類型を調査分析し、土地利用の変化と景観に影響を与える建築空間の関係の検討を進めてきた。この地区では、住居系開発は敷地規模、間口規模により建築空間に一定のパターンが見られることがわかり、都市計画や開発動向など地域の計画条件とあわせて、空間変化を想定する可能性が見いだせた。しかし、同じ共同住宅開発であっても、芦屋と大阪市の事例地区では違いが見られ、地域条件と市街地変化の関係をみていく必要があることがわかった。 また、調査検討より、都市環境の持続は変化をともなうものであり、変化を前提に地域景観を整序していくことを検討するためには、フィジカルな要因である土地利用転換と建て替えによる空間変化の景観への影響と、それを調整する地域のしくみが重要であることがわかる。フィジカルな要因については、事例地区研究を続けるとともに、ソフトな環境管理に関わるしくみについては、地域まちづくりにおいて景観法の活用などを検討している大阪市平野地区で地域と協働型の調査を開始したところである。
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