再建市街地における景観変化の調査結果より、一般市街地の景観の変化は、(1)敷地単位の個別の変化が蓄積されることにより大きな景観変化が引き起こされる、(2)局所的に周辺市街地と大きく異なる景観の激変が発生しうる、(3)景観は、継続的に変化している、ということがわかった。こうした一般的な景観の認識は、(1)建築物だけでなく、緑、店・仕事場、人、雰囲気など、地域環境の特徴と連動する、(2)居住歴や現在住んでいる住宅形式により地域環境の認識や景観イメージが異なる。また、人々は変化によって地域景観に目が向くのであり、そのとき景観は、対比や調和など、既存の町並みとの関係において把握されている。景観は、敷地単位だけではなく、隣接地や地域環境との関係性から表現する必要がある。 景観に変化をもたらすような市街地の変化は、多くが敷地の変化を伴っている。建築物の用途・形式の大きな変化は、土地利用の問題であり、景観の調整においては、開発行為や敷地の変更など、土地利用におけるコントロールの必要がある。また、建築物の色や意匠など個別のデザインレベルだけではなく、規模や商さなど建築物のボリュームと配置といった複数の建築物の集合の状態、建物と建物の関係などから、景観を表現する方法が必要である。 基準は、得てして、数値やコード化による抽象化によって客観性を与えられると考えるが、地域の景観整序においては、地域の環境リテラシーを高めるような生活環境と関連させた空間表現が重要であり、そのためには基準の社会的・文化的意味を発信することが重要である。意味のある基準の設定とあわせて、協議のプロセスを法定していくことを求める。現状では、恣意性が高いことによって、裁量性の高い基準による協議は社会的合意が得られにくいが、協議・判断の専門性、基準の環境的意味の客観的評価など、協議型景観整序が可能となるようなしくみづくりを検討していくことが今後の課題である。
|