研究概要 |
本研究では、「情報処理システムとしての行政」という観点からの都市法の現代的展開に関する分析を目指し、都市空間についての意味/情報の産出/処理過程の行政法的位置づけに重点を置いた。 (1)「生成途上の規範意識」:論文「景観保護と司法判断」(矢作弘/小泉秀樹編『成長主義を超えて』所収)において、(i)「審美的判断の主観性」(ii)地域空間の意味の「物語性」などについて論じた。 (2)「開かれた社会における財産権」:論文「建築紛争と土地利用規制の制度設計」では、地域空間形成に関する調整・分配ルール」を「権利配分」の動態的具体化過程と捉え、段階モデルによる考察を試みた。論文「まちづくり・環境訴訟における空間の位置づけ」では、「土地所有権=財貨秩序」と「人格秩序」の協働を捉える視点を強調した。財産権のイノベーション的役割を指摘するカール・ハインツ・ラデーア論文を翻訳公表した。 (3)「都市空間管理の制度設計」:論文「景観保護と司法判断」および論文「建築紛争と土地利用規制の制度設計」において、利害関係者の情報構造の観点から現行土地利用規制制度を分析した。コース論文の読み直しの上に立って、「事前確定型規制」の過度の重視を批判し、「まちづくりアセスメント」「協議型まちづくり」の重要性を主張した。論文「条例制定の法的課題と政策法務」では、「規範抵触論」的思考枠組を前提として法律と条例の関係を再検討し、自治体の認知的・試行的先導性を活かした創造的まちづくりのための制度設計にも触れた。論文「まちづくり・環境訴訟における空間の位置づけ」「都市計画の司法統制」判例評釈「騒音問題と都市計画事業の適法性-小田急訴訟上告審本案判決」において、都市空間に関わる行政争訟の制度設計を検討した。 (4)「都市空間における『公共性』」:このサブ・テーマを直接に論じた公表業績はなかったが、現在住民参加に関する論文を執筆中であり、研究を継続する(論文"Recent Development of Decentralization, Deregulation and Citizens' Participation in Japanese City Planning Law"において既に簡単に触れた)。
|