研究概要 |
本研究では,まず中国における水資源の観点からの歴史的都市形成の変遷を通して中国では如何に水資源を重要視し,水辺ネットワークを綿々と維持してきたかをみた.ついで,北京市を中心とした地域における水資源の危機的状況をみた.さらに,世界的潮流となっている持続可能性概念に基づいた生態水利建設の考え方を把握した.そして,このような背景と状況下で進められている北京市の水辺整備の実態調査とその評価を行った.評価は北京市の転河,菖蒲河,元朝堀の3箇所の水辺を対象として北京市の水辺整備方針の結果に関する現地面接調査により行った.サンプル数は1箇所につき100である.得られたデータを用いて単純集計ならびに多基準分析による考察を行った.結果はいずれも高い評価が得られ,今後の維持管理への負担に関しても貨幣的負担も労働による負担も肯定的であった. 以上より,確かにオリンピックの開催を契機としてはいるが,北京市が水辺整備を急いだ背景には,数千年にわたる中国の伝統的な国家戦略として構築してきた「水と緑」の水辺ネットワークの破壊を,現在の政府が再生しようとしているとみることができる.しかしその一方で,このような水辺整備は世界史に残る大規模な南水北調プロジェクトのように他流域・他地域に頼らなければならない綱渡り的状態の下で行われているのが実態である。水資源利用のこのような際限のない拡大が,また新たな環境破壊・環境汚染・環境文化災害の温床になることは避けられないと思われる. 一方,京都の鴨川において四季を通して橋間ごとの印象ならびに観察データを集めた.ついでこれらの1年間のデータを多基準分析の考え方で評価した.
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