研究概要 |
本年度が,本研究の最終年度となっているので,これまでの研究成果をまとめ報告書を刊行することが,本年度の主な研究活動であった.本研究の研究成果は,14本の雑誌論文として公開されているが,それらは4群の成果としてまとめることができる. 第1の成果は,GISを共通のプラットホームとした都市社会学と都市地理学による共同研究が,概念の相違点などを明らかにしたことにある,第2の成果は,東京大都市圏の空間構造の変容過程の分析から得られた.東京大都市圏全体を見ると,ローカル・コミュニティが有してきた社会文化的特性が脱色され,全方向的に均質な中心対周縁という凝離した空間で序列化する力によって構造化されている実態が明らかになった. それに対して京阪神大都市圏は,大阪,京都,神戸の3都市を核とした構造をもっている点が,東京大都市圏とは大きく異なる.1980年以降の変化を分析した結果,ホワイトカラー,ブルーカラーの居住分化傾向は維持されたままであるものの,80年段階では明瞭であった職業階層による居住圏の同心円構造が不明瞭化してきたことが明らかになった.これが第3の成果である.さらに,二大都市圏を同一基準で社会地区分析にかけた結果,東京大都市圏では工業が集積する地域が見られたものの,京阪神大都市圏では東京大都市圏と同程度の工業集積地域は少ないことが示された.複数の都市圏を同一基準で分析するという方法論の確立が第4の成果である.これらの成果を報告書にまとめた.
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