本年度は、用途混在型市街地における変容過程と更新プロセスの解明について、渋谷区代官山地域を対象とし、以下の調査及び分析を行った。 1.大規模土地所有を中心とした市街地形成・変容過程に関して、地積図・地形図・住宅地図・地主総覧・旧土地台帳等により、整理・分析した。その結果、明治末期には、山本氏、朝倉氏、西郷氏等が大土地所有者として存在し、昭和末期までに、これら大土地所有者により道路や学校用地への土地提供がなされ、その後旧華族や政治家、文化人の邸宅地、企業の社宅群や公的住宅団地として用途転換してきた経緯が明らかとなった、これらは、現在、ヒルサイドテラス、渋谷会議所(重要文化財)、ノースウェスト航空社宅、エバーグリーンホームズ、鶯住宅団地、乗泉寺、鉢山中学校、都立第一商業高校、西郷山公園、菅刈公園、菅刈小学校等として、地域の貴重な空間となっているものの、大規模開発用地としての今後の展開が地域の変化に大きな影響を与えることがわかった。 2.従来より重層的に存在する地域活動団体、建築紛争等をめぐり設立したまちづくり活動団体等の発足及び活動の経緯をインタビュー調査等により整理・分析した。町内会等の地縁型組織、まちづくりを対象とした生活環境系、商業を含めた地域活性化系、来街者を交えたサークル系の地域活動団体の発足及び活動経緯を把握し、これらの相関関係を先進的まちづくりを展開している地域(神楽坂・谷中)と比較した結果、各団体の連携や交流が希薄であり、とくにまちづくり団体と地縁型組織、行政との相互理解が不足していることが明らかとなった。
|