本年度は、代官山地域の用途混在型市街地の形成経緯とその動態を明らかにするため、以下の調査及び分析を行なった。対象地域は、八幡通り及び旧山手通りを中心とした代官山町・猿楽町・鶯谷町・鉢山町のエリアとした。 対象地域の住宅市街地の変容過程を住宅地図により整理・分析した結果、主な用途混在等の変容は1983年以降に多く、その変容タイプは以下のように分類できた。建物形式等により、(1)住居系から事務所・商業・住商併用へと街区内が中層ビル化している街区、(2)同じく徐々に密度があがっていき、中層ビル化している街区、(3)戸建と低中層ビルが混在化している街区、(4)同じく徐々に密度があがっていき、戸建と低中層ビルが混在化している街区、(5)全体に共同住宅・業務ビル化している街区、(6)全体に戸建と共同住宅で構成されている街区、(7)高層ビル化している街区、(8)変化のない街区に分けられた。 猿楽町と代官山町は、住居系から事務所・商業・住商併用へと街区内が中層ビル化している街区((1))が全街区の半分以上を占め、事務所・商業・住商併用の建物が多くなっている傾向がみられた。とくに、代官山アドレス周辺の街区内での用途混在化の傾向が顕著であった。 一方、鶯谷町と鉢山町は、住居系から事務所・商業・住商併用へと街区内が中層ビル化している街区((1))と、同じく徐々に密度があがり、中層ビル化している街区((2))と戸建と低中層ビルが混在化している街区((3))の3つのタイプが多く、なかでもタイプ(3)の戸建・低中層ビルが混在化している街区が猿楽町や代官山町に比べて多くみられ、とくに鶯谷団地・エバーグリーン周辺の街区で住居用途の建物が多く存在していることが確認された。 以上、街区レベルでの混在化の傾向や建物規模・建物内の立体的な混在用途の特性は、駅に近い代官山町・猿楽町と住宅団地や寺院の立地する鶯谷町・鉢山町とでは異なっていることが明らかとなった。
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